パチンコホールで捕まえて・14 もしかして!と慌て振り返ったが、そこに居たのは常連の、あの男だった。 「おいおい、にぃちゃん、久しぶに会えたっつーのに、そんなあからさまにガッカリした顔するもんじゃねーぞ?」 男はフザけた態度で挨拶した後、彼女の事について聞きたくないか?と突然俺に持ち掛けてきた。 何故この男がそんな事を知っているのかは分からない。 だが、 そんなの……願ったり叶ったりだ!! 俺は襲い掛かる勢いで男の両肩を掴み、『是非、お願いします!!』とガクガク揺さ振った。 男は揺さ振られた事で軽い脳震盪を起こしていたが、立ち話もなんだから、座って話そうか、とホール内を指差した。 パチンコしながら話すつもりかよ……。 うるさくて聞こえたもんじゃないだろうと思ったが、話を聞かせてもらえるのならこの際なんだっていい。 俺はろくに選びもせずに、一番近くのエヴァンゲリオンの台に座ると、男も迷わず俺の右隣に座り、ほらよ、とカフェオレを渡してくれた。 「あ、すいません」 しかし、この男……何故俺がカフェオレを好んで飲む事を知っているんだろう……。 「にぃちゃん、いつもあの子からカフェオレ買ってただろう?」 見られていたのか!! 俺は顔から火が噴き出しそうだった。 既に俺も男も金を入れて打ち始めていたので、男の声が聞き取りづらくなる。 「俺があのジンクス教えた次の日に、にぃちゃんがあの子からカフェオレ買ってるのを見たよ」 顔を上げる事が出来ずに、俺は俯いたままで男の話を聞いた。 パチンコの方は何やらリーチがかかっている様だが、顔を上げる事は出来ない。 「最初は馬鹿な奴だと思ったけど、毎日にぃちゃんがカフェオレ買ってるの見てな、ああ…あの子に惚れてるんだなって思ったよ」 俺はいよいよ顔を上げる事が出来なくなって、小さくコクンと頷いた。 この頃には、俺の台は静まり返っていたので、先程のリーチはどうやら外してしまったらしい。 「だから、にぃちゃんにだけはあの子がやめた理由、教えてやるわ……他の奴には内緒にしとけよ?」 「……は、はい」 俺がゴクリと唾を飲んで顔を上げた瞬間だ。 「あ、にぃちゃん、それ全回転だよ」 「はい………え?は!?」 こ、この全回転はまだ見た事がない! 俺は慌て携帯を取り出した。 最近、俺のハマっている攻略サイトで『パチログ』という物を始めたので、そこにアップする為の写真を撮らなくてはならない! 男はまだ喋っているが、俺は構わずに携帯のシャッターを押しまくる。 「…で……歳……て、……でたんだよ」 男の声が途切れ途切れに聞こえる中、俺はパチンコの液晶に映るユイを夢中で撮り続けた。 その後、全回転の演出が終わり、確変が確定して、ようやく俺は男の話をまともに聞く事が出来る。 「えっと……歳が何でしたっけ?」 「だから、彼女、歳サバよんでたんだ……それがバレたから辞めたんだよ」 「え?」 このパチンコ屋で働くコーヒーガールは、確か19歳~23歳位までを募集していた筈だ。 「えっと……17歳とか18歳だったって事ですか?」 「いや……逆だ」 「逆?」 「30歳だったんだ」 「……は?」 Next⇒ パチつか次回いよいよ最終回です