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パチンコ

~12話~パチンコホールで捕まえて

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美羽さん

ブロガーランキング:-位
載りました~(;▽;)
続けていきます

パチンコホールで捕まえて・12




「あ、あの……何で最初のコーヒーガールからコーヒーを買わなかったんですか?」

俺が怒りを押し殺した低い声で問い掛けると、常連らしき男は振り返って陽気に答えてくれた。

「なんだ、にぃちゃん知らないのかい?最初のあのコーヒーガールな、あの子からコーヒーを買うと、なかなか当たらなくなるっつーのは、このホールじゃ有名な話だぜ?」

「え!?」

俺以外の人にとっても、彼女は不幸を運ぶ死に神扱いだったのか?

俺が大袈裟に驚いた事に気を良くしたのか、男は調子に乗って更に話を続けた。

「パチンコする奴ってのは、結構ゲンをかつぐだろう?このホールであの子からコーヒーを買ったら負けるっつーのは……まぁ、ジンクスみてぇなモンだよ」


全然知らなかった。
このホールに、そんなジンクスがあったなんて……。

しかし、全くコーヒーが売れないというのに、仕事をやめさせられないというのもおかしな話だ。

なんて謎の多い子なんだろう。
そして、なんて可哀相な子なんだろう。

周りの子がコーヒーを次々と売る中で、
自分だけ、誰にもコーヒーを買ってもらえないのはどんな気分だろう。

俺だけは、絶対に彼女からコーヒーを買い続ける。

俺の、彼女にたいする気持ちは燃え上がる一方だった。

隣の男はまだ何か喋っているようだったが、俺の耳には全く入って来なかった。




そして、翌日から俺には大きな目標が出来た。

その目標とは、『彼女からコーヒーを買って、パチンコで大勝利をおさめる』というものだ。

大勝利というからには、少なくとも10連チャンはしなくてはならない。
欲を言うなら、20連チャンはしたいところだ。

とにかく、目立たなくてはならないのだ。

目立ちまくって、俺は大声で周りに自慢するんだ。

『あのコーヒーガールからコーヒーを買ったら、こんなに大勝ちした!』と。

周りは皆、さぞ驚くだろう。

皆、我先にと彼女からコーヒーを買うだろう。

彼女が俺以外の男にコーヒーを売るのはあまり気分が良くないが、俺は彼女の喜ぶ顔が見たいんだ。

彼女はきっと、あの大きな茶色い瞳に涙を浮かべて、こう言うんだろう。

『貴方のおかげです。本当にありがとう』と。

俺の頭の中の空想はどんどん大きく膨らんで、ついには表情にまでそれが現れていたらしい。

気付けば、両隣の客が俺の事を明らかに不審そうな目で見つめていた。
いつかのホールスタッフも、通路の端から俺を見ていた。

俺はバツが悪そうに片手を上げて、『別に何でもないよ!』とアピールしたが、周りは、気まずそうに視線を逸らしただけだった。



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