やぁ。 ハハ。相変わらずだな、君は。 もう日が暮れちまったよ。 さて。つづけさせてもらってもいいかい? そのちっちゃな耳を傾けて、よく身に染み込ませてくれ。 っと、僕が10時間の稼働で、僅かに2Kのプラス、時間はだから…19時になるね。 そこまではさっき聞いてもらった通りさ。 …ちょっと魔が差したんだと思う。 実はやっぱり不完全燃焼でね、ハハ。 少しだけパチンコも見てみることにしたんだ。 君ならわかるだろ? あの日は月曜だったよ。 特にうちたい機種があったわけじゃない。 だから週間イベントの海を覗いてみたんだ。 繁華街にあるホールでも、海はどこも変わらないね。 僕はさながら、廃屋に艶やかに咲く一輪の花のように、ある種、浮いた感覚を覚えたよ。 つい、上々の調整の台を探してしまってね。 まぁ、よくはわからないんだけどね。 それがぴたり! 2Kで60回転オーバーさ。 出来過ぎ、だろう? …この2Kでやめるはず、だったのさ。 マイナスにはしたくないしね。 …あとは、君の想像に難くない。 あれよあれよと追加投資さ。 結局、海だけで12K。 310回転程、回転数を上乗せしたわけだよ。 ノーマルで、「おほっ。当たりそう、コレ!」なんて興奮したのははじめだけさ。 その後、何をうったのかな? もう覚えていないよ。 気付いたら、TOTAL20K負けになってしまった。 10時間で2Kのプラスののち、2時間で敗者に転落さ。 何でこうなったのか、僕にもわからないんだ! だから。 ちがうんだ。 ほんの些細な出来心、というやつさ。 本意なんかじゃない。 信じてくれ。 そんなはずがないだろ? ハハ、笑っちまうよ。 …でも、きっとわかってくれたと思うんだ。 だから今話したことは、他言無用で頼む。 他ならぬ君には、いや、君にだけ信じてもらえたならいい。 君も、…気を付けてくれよ。