続いてます。 アスカ「ようやくお目覚めね、バカミトロン!」 私服姿 のアスカは腰に手を当てて、ベッドの上で寝ぼけ眼を擦るミトロンを見下ろしていた。外には気持ちのいい朝が溢れていた。 ミトロン「なんだ、アスカか」 わざわざ遅刻しないように起こしに来たアスカは、その言葉を聞いてむくれる。 そんなアスカをよそに、二度寝に入ろうとするミトロンを見て、アスカは布団を強引に引き剥がす。 台所では母親のユイが洗い物をしながら、だらしのない息子に呆れていた。そして、いつまでも新聞を読んで動こうとしないゲンドウに支度をするようにせきたてる。 「ああ」とだけ空返事をするゲンドウ。 ユイ「もう、いい歳してミトロンと変わらないんだから」 ゲンドウ「君の支度はいいのか?」 ユイ「いつでも大丈夫。ホールに遅れて冬月先生にお小言言われるの、私なんですよ」 ゲンドウ「君はもてるからなあ」 ユイ「馬鹿言ってないでさっさと着替えてください」 ミトロンの尻を叩いてホールへ行く準備を済ませたアスカは、ユイに挨拶をして玄関を出て行く。 渋滞を横目に、駆け足でホールへ向かうアスカと、その後を追うミトロン。 ミトロン「今日もホールレディが来るんだってね!」 アスカ「まあね。ここも来年は改装されて新規開店するんですもの、どんどん人は増えていくわよ」 ミトロン「ホールレディがかわいい女の子だったらいいな」 アスカは口を尖らせてムっとする。 その時、パンを咥えたまま走るもう一人の女性の姿があった。 女性「あー遅刻遅刻―。初日から遅刻じゃかなりヤバイって感じだよねー」 大通りへ出るための曲がり角へ差し掛かる女性。すると、運悪くそこを通り抜けようとしたミトロンと頭からぶつかり合って倒れ込んでしまう。 頭を抑えて顔を上げるミトロン。それに気付いてとっさに乱れたフレアスカートを直す青髪の女性。 女性「ごめんね、マジで急いでたんだ」 再び駆けていく女性。 「ホント、ごめんねー」と言ってミトロンに手を振りながら。 あまりの急な出来事に、ただ口を開けてその女性を見送ることしかできないミトロン。その様子を後ろから見ていたアスカは、眉間を吊り上げて不満を噛み潰していた。 ホールに着いたミトロンは、トウジとケンスケに朝の出来事を話していた。 トウジ「なにぃ?で、見たんか?」 ミトロン「別に見たってわけじゃ。チラッとだけ」 その様子を見たヒカリは、トウジの耳を引っ張りリーダーとしての意見を言う。 ミトロン「尻に敷かれるタイプだな、トウジって」 アスカ「あんたもでしょ」 ケンスケの両側で痴話喧嘩が始まる。 そんな風景を見て「平和だねぇ」とケンスケはつぶやく。 駐車場にタイヤの軋む音が鳴り響くと男達が窓際へと集まってきた。 ミサトは男達に大人気。 浮かれるミトロンたちを見て「なによ、三バカトリオが。バッカみたい!」とアスカとヒカリが言う。 ミサト「喜べ男どもー。今日は噂のホールレディを紹介する」 ドアが開くと同時に、早速ミサトは今日の本題に入る。 女性「綾波レイです、よろしく」 そう言って笑顔を見せたレイ。 驚くミトロンに気付いて、今朝の出来事の文句を言うレイ。それを聞いて立ち上がったアスカは「言い掛かりはやめてよ」と言ってレイに食って掛かる。 レイは、ミトロンを庇うアスカにの態度に「何?できてるわけ?二人」と詮索の態度を見せる。 一瞬たじろいだアスカは「ただの幼なじみよ、うっさいわねぇ」と言って顔を赤くする。 「ちょっと開店時間よ。静かにしてください」とヒカリがリーダーらしく注意した。 しかし、ミサトは「あぁ、楽しそうじゃない。私も興味あるわ~。続けてちょうだい」と言って、その光景を楽しんでいた。 ホールのみんなが大声で笑う―― ミトロン「そうだ、これもひとつの世界。僕の中の可能性。今の僕が僕そのものではない、いろんな僕自身 があり得るんだ」 段々と分かり始めるミトロン。 ミトロン「そうだ、ホール店員の僕もあり得るんだ」 ミサト「そう思えば、この現実世界も決して悪いもんじゃないわ」 ミトロン「こんな現実世界も、悪くないかもしれない。でも、自分は嫌いだ」 ―――続く